日本人は英語が話せても、なぜ議論で存在感を示せないのか?

「発表する英語」から「仕事を動かす英語」へ
―Debate Trainingでそれが可能になる―

2026年09月02日

河原崎ケニー

英語でプレゼンテーションができても、なぜ議論では言葉が出ないのか

日本企業で英語研修をしていると、「英語でプレゼンテーションはできる。しかし、その後の質疑応答や議論になると急に言葉が出なくなる」という悩みをよく聞きます。これは単なる語彙力や文法力の問題ではありません。準備した内容を正確に伝える力と、その場で相手の意見を受け止め、自分の立場を示し、合意をつくる力は、似ているようでまったく別の能力だからです。

プレゼンテーションでは、話の順序も表現もあらかじめ準備できます。一方、議論では、予想外の質問、反対意見、時には厳しい批判に即座に向き合わなければなりません。そこで必要なのは、完璧な英語ではなく、「私はこう考える。理由はこれだ」と、多少言葉に詰まっても自分の意見を引っ込めない姿勢です。

欧米人との議論で信頼と尊敬を得るために必要なこと

私はニューヨークのゴールドマンサックスで7年間働き、アメリカをはじめとする欧米のビジネスパーソンと仕事をしてきました。その経験から強く感じるのは、欧米人は必ずしも英語の流暢さだけで相手を評価しているわけではない、ということです。自分の頭で考えているか。異論があっても誠実に伝えられるか。相手の意見を理解したうえで、必要な反論ができるか。こうした態度が信頼と尊敬を生みます。反対意見を述べることは、関係を壊す行為ではありません。むしろ、責任を持って議論に参加する意思の表明なのです。

ロジックだけでは相手を動かせない―感情と信頼への働きかけ

ただし、正しい論理だけでは人は動きません。ビジネスの意思決定には、数字や根拠に加えて、不安、期待、誇り、損失への恐れといった感情が必ず関わっています。だからこそ私は、研修で「ロジック」と「感情への働きかけ」の両方を重視しています。結論と三つの理由を明確に示す。同時に、具体的な物語や問いかけを通じて、相手に「自分に関係のある問題だ」と感じてもらう。さらに、自分の経験や価値観を誠実に語り、話し手としての信頼をつくる。論理、感情、信頼の三つがそろって初めて、相手の納得につながります。

ディベート研修は、英語で議論する力をどのように鍛えるのか

この力を鍛えるうえで、ディベートトレーニングが最適です。ディベートと聞くと、相手を言い負かす競技を想像する方がいます。しかし、実務で目指すのは勝敗ではありません。限られた時間で論点を整理し、自分と反対の立場も理解し、質問と反論を交わしながら、より良い判断に近づくことです。あえて賛成と反対の両方を考えることで、自分の思い込みや論理の弱点にも気づけます。

研修では、短いスピーチ、反対尋問、即興の反論、再構成を繰り返します。最初は英語が止まってしまう人も、型を使いながら何度も実践するうちに、「反論されても怖くない」「質問されるほど、自分の提案を深められる」と感じるようになります。知識として表現を覚えるだけでなく、プレッシャーの中で使ってみる。その反復が、会議で発言する勇気と瞬発力を育てます。

これまで三万人を超える受講者を指導するなかで、私は、英語力が高い人ほど「間違ってはいけない」という意識に縛られる場面も見てきました。しかし、実際の会議では、完璧な一文を考えて沈黙するより、不完全でも早く仮説を出し、相手の反応を受けて修正する人のほうが貢献できます。ディベートは、失敗を避ける訓練ではなく、失敗しても立て直せる自信をつくる訓練でもあります。

海外で顧客との関係を築き、仕事を生み出すために

そして、海外で自ら顧客との関係を築き、仕事を生み出す人には、もう一段高い力が必要です。相手の課題を質問によって発見し、自分の提案を相手の言葉で語り、異論を受け止めながら次の行動を合意する力です。英語はそのための道具にすぎません。目的は、正しい英語を話すことではなく、英語を使って信頼を築き、人を動かし、仕事を前に進めることです。

「英語を話せる人」から「英語で価値を生み出せる人」へ

日本人が世界でさらに存在感を発揮するために必要なのは、ネイティブのように話すことではありません。自分の考えを持ち、相手への敬意を失わず、堂々と異論を述べることです。

手前味噌になりますが、私自身ディベート力を常に磨きたいと心掛け、日本英語連盟主催の社会人ディベートコンテストでチャンピオンになった経験もあります。

「英語を話せる人」から「英語で議論し、価値を生み出せる人」へ。その一歩を、実践的なディベートトレーニングでみなさんに是非、体験していただきたいと思っています。

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