コラム
トップに合わせるか、ボトムに合わせるか。その前に考えたいこと
― 組織づくりで本当に考えるべきこと ―
2026年07月10日
林田 康裕
組織づくりや人材育成に関して、企業研修やコンサルティングの現場で、管理職の方から時々このような質問を受けます。
「組織を成長させるには、トップ社員を基準にすべきでしょうか。それとも、現時点で課題のある人に合わせるべきでしょうか。」
一見すると単純な問いですが、私はこの質問に対して、「どちらでもありません」とお答えすることがほとんどです。
もちろん、高い成果を出している社員を基準にすれば、組織全体のレベルは上がりやすくなります。一方で、現時点で課題のある人に目を向けなければ、組織全体の底上げは難しくなります。
しかし、本当に考えるべきことは「誰に合わせるか」ではなく、「何を実現したい組織なのか」という目的です。
基準は目的によって変わる
例えば、新規事業を立ち上げる場面であれば、挑戦できる人を基準にした方が組織は前に進みます。
一方で、安全性や品質が最優先される現場では、一部の優秀な人だけが成果を出せば良いわけではありません。全員が一定水準を満たしていることの方が重要になります。
つまり、トップに合わせるか、ボトムに合わせるかという議論は、目的が決まって初めて意味を持つのです。
組織は成長段階によっても変わる
もう一つ忘れてはならないのが、組織は常に変化しているということです。創業期と成熟期では求められるものが違います。人材構成も、市場環境も、お客様の期待も変わります。
昨日まで最適だった基準が、今日も最適とは限りません。
「以前はこのやり方でうまくいっていた。」
企業ではよく聞く言葉ですが、変化が激しい時代だからこそ、その成功体験が組織の成長を止めてしまうこともあります。
目的が共有されると判断基準が変わる
以前ご支援した企業では、管理職同士が「現場のレベルに合わせるべきだ」「いや、高い基準を示すべきだ」と議論していました。しかし、お話を伺っていくと、問題は基準ではありませんでした。
それぞれが違う目的を見ていたのです。
そこで、「私たちは何を目指す組織なのか」を改めて話し合ったところ、議論の内容が大きく変わりました。「誰に合わせるか」ではなく、「目的を実現するためには、今どこに基準を置くべきか」という視点に変わったのです。
基準は手段であり、目的ではない
組織づくりでは、「トップに合わせるべきか」「ボトムに合わせるべきか」という議論が起こります。しかし、それ自体が目的になってしまうと、本来目指すべき方向を見失ってしまいます。
基準とは、あくまでも目的を実現するための手段です。だからこそ、環境や組織の状態が変われば、その基準も柔軟に見直していく必要があります。とはいえ、社内だけで議論をしていると、それぞれの立場や過去の経緯が影響し、客観的な判断が難しくなることも少なくありません。
そのような時は、第三者が議論を整理し、目的に立ち返る場をつくることで、組織が前に進み始めることがあります。
「誰に合わせるか」を議論する前に、「私たちは何を実現したいのか」。その問いを共有できる環境をつくることが、組織づくりの第一歩なのではないでしょうか。
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